片持ち階段の構造を支えているのは見落としがちな○○鉄筋

Sponsored Links
/* */

階段は大きく分けて構造的に2つの種類に分類されます。

主に屋内階段に多く、四周を梁で囲まれた中に階段が設置されている
いわゆる「スラブ式」の階段と、逆に屋外階段に多く採用されている
中心部の壁から階段を片持ちスラブ的に支えている「片持階段」です。

 

今回は

「片持階段」の特徴についてお伝えしていきましょう。

 

まず

「片持階段で構造的に最も主要な鉄筋って何か分かりますか?」

 

答えは

片持ちスラブを考えると分かってくるはずです。
片持ちスラブの場合は梁から腕のように伸びるスラブを
構造的に支える主筋方向の上筋が重要でしたよね。

「えっ?そうだっけ?」という人は記事の最後に
片持ちスラブの記事のリンクを付けていますので
そのリンクからもう一度読み直して下さい。

このように、私の記事は基本的に関連性のあるだろう
記事へのリンクを最後に付けることで「知識が単発になる」
事を防いで、出来るだけ「連続性のある深い知識」
になるように気を付けています。

少し脱線したので本題に戻りましょう。

 

ここで

片持ちスラブの主筋方向の上筋と同じ役割をしているのが
「階段主筋(段ばな筋)」と呼ばれる、階段の踏み面の先端部に
壁から直交して出ている鉄筋です。

大抵、あなたが組終わった鉄筋の上を歩くときに、
踏む場所ですよね。

 

だから

片持階段の構造は、中央の壁から出ている階段主筋が、
段のピッチで支えているのです。

 

しかし

今回、私がお伝えしたいのは「階段主筋」ではありません。

 

なぜなら

階段の配筋を組むのに「階段主筋」を忘れて組むことは不可能でしょう。
段々になっている「イナヅマ筋」の出っ張っている部分に結束されるのが
「階段主筋」なので、忘れていたら素人でも見つけることが出来ます。

 

では

一体何が伝えたかったのか?というと片持ちスラブの時にも
「上筋の位置が非常に重要である」という事も言ったはずです。
この「位置」を決めるための鉄筋が片持階段にはあるのです。

 

それが

「階段受け筋」です。

 

具体的には

階段の受け壁の中に設置される、段の傾斜に合わせて
斜めに設置されている鉄筋の事です。

この「階段受け筋」を適切に配置することにより、
階段主筋の位置を保持する機能があるのです。

 

しかし

階段受け筋は階段の壁の型枠を組んでしまうと
覗き込まないと見えない状況になってしまいます。

 

だから

現場を上り降りするときに階段の鉄筋が組上がった状態で

「よしよし、ちゃんと受け筋入っているな」

と確認しながら歩いて見ることをオススメしますよ。

 

最後に

鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の該当部分を確認して下さい。

 

P.253

a.片持階段と受け壁

この形式はもっとも多いものであり,壁からの片持階段である.壁への定着は,片持スラブと同様に行う.この片持階段で注意すべきことは次のとおりである〔解説図9.17 参照〕.

i)階段主筋(段ばな筋)は1-D13以上とする.壁内には段ばな筋の位置を保持するための受け筋を配筋する.

ii)いなづま筋はD10@200とし,受け壁面より約50 mm の位置に第1いなづま筋を配筋する.

iii)階段受け壁は片持階段の固定端曲げモーメントを受けるので,その応力に見合う縦筋の補強が必要である.一般には,この補強筋を応力の大きい部分のみに階段の傾斜に沿りて配筋するのが多い.しかし,この施工はきわめて煩雑である.そこで縦補強筋が必要な場合は,解説図9.17(b) のように片持階段の段床部のみに限って壁筋と同じく上下の梁に定着させる配筋方法が好ましい,
なお,踊り場は3辺固定または2辺固定スラブとなる.

 

解説図9.17 片持階段

 

つまり

片持ち階段の構造を支えているのは、型枠を組み立てた後では
影に隠れて見落としがちな「階段受け筋」です。

こちらの「階段受け筋」は片持ちスラブで言うと主筋方向の上筋の
位置を適切な位置に支える為に必要な鉄筋なので階段の壁内に
設置されて見落としがちではありますが、しっかりと確認を
忘れないようにしておきましょう。

 

ちなみに

片持ちスラブについてはこちらで記事にしているので
合わせて読むと理解がより深まりますよ。

↓ ↓ ↓

  • コメント: 2
banner11

Sponsored Links


関連記事

  1. 地下水位が床付け深さより高い地盤の掘削時の注意ポイントとは?

  2. 鋼矢板が施工を苦手とする地盤は砂質層、粘土層、礫層、それとも?

  3. 杭工事で重要な管理項目の1つである杭芯のずれはいつ確認する?(1)

  4. 梁筋のカットオフ位置は、なぜ下端筋の方が5d長いのか?

  5. 梁の主筋が納まらない時に、勝手にしてはイケない事とは?

  6. 建築現場で型枠支保工用の足場を組んだ時の失敗例とは?(1)

  7. 隅柱や側柱において3次元的に考えるべき納まりとは?

  8. 複数本並んだ長尺物を継ぎ足す場合の原理原則とは?

  9. 型枠支保工の計算の不備から起きる最悪の状態とは?

コメント

  • コメント (2)

  • トラックバックは利用できません。

    • いっちー

    建築構造屋です。施工の勘所について分かり易い解説で参考にさせていただいています。
    拝見した記述の中で気になった点がありましたので、コメント致しました。
    構造力学的には段鼻筋の曲げ応力を負担するのは段鼻受け筋ではなく、壁筋の段床部分の範囲に追加して設ける解説図9.17の⑤壁補強筋です。
    段鼻受け筋はどちらかというと段鼻筋が適切な位置に配筋されるように設けられる段取り筋としての役割です。
    段鼻配筋の壁側の位置が下がってしまっては、片持ち部材として設計で期待している曲げ強度が期待できないためです。
    したがって、”こちらの「階段受け筋」は片持ちスラブで言うと主筋方向の上筋と同じような応力に対して必要な鉄筋なので・・・”
    ではなく、”「段鼻受け筋」は片持ちスラブでいう主筋の段鼻筋が適切な位置に配筋されるために必要な鉄筋なので・・」が正かと思われます。

    • ご指摘ありがとうございます。
      冷静に読み直すとその通りですね。
      今後も何かお気づきの点がございましたらコメント頂ければ嬉しいです。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

プレゼント付無料講座開催中

kouza
仮設 syoseki

プロフィール

myImage

作者:TM


私の職業は「建築現場の現場監督」。
何だかんだで15年働いている。
その15年分のノウハウを若い現場監督さんのために、全て暴露しくよ。

なぜ、キツイ建設業界で働き続けているのか?
その秘訣がしりたいあなたは
今すぐこちらをクリック

↓ ↓ ↓

詳しいプロフィールはこちら


あっ、
ただし「社外秘」や「会社独自の技術」じゃ無いよ。
あくまで、「私個人の感じる本音」だよ。

最新記事・おすすめ記事

  1. 鉄骨工事の中で自然と行われている「環境的な配慮」とは?

    2023.04.10

  2. 鉄骨の製品検査に工事監理者さんを連れていくのは当たり前なのか?

    2023.04.03

  3. 鉄骨工事の工事現場施工要領書に関するチェックのポイントとは?(…

    2023.03.27

  4. 鉄骨工事の工事現場施工要領書に関するチェックのポイントとは?(…

    2023.03.20

  5. 鉄骨工事の工事現場施工要領書に関するチェックのポイントとは?(…

    2023.03.13

  1. 一級建築士の資格勉強を始める時期はいつからか?という悩み

    2020.08.07

  2. 在宅勤務になり建築現場に配属されない時の学習方法は?という悩み

    2020.04.20

  3. 最上階の梁の定着は一般解の梁と何が違うのか?

    2019.02.15

  4. TMです。新年明けましておめでとうございます。【悩める建設マンへ】

    2019.01.01

  5. 工事写真をスマホで管理する時代が到来!Photo Manager(2)

    2017.10.09

人気記事ランキング

月間週間デイリー

ブログランキング

にほんブログ村 住まいブログ 現場監督へ