「設備屋!この補強、配筋検査で指摘されたから直しておけよ!
あんなに鉄筋曲げて検査が通る訳がないだろ!」
と言い放って現場を後にする鉄筋屋さんの職長さん。
一体何が起こったのでしょうか?
まずは、「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の
該当部分を確認して下さい。
鉄筋屋さんが怒ったヒントを見つけることが出来ますか?
P.246
(d)一枚のスラブに設備用の小開口( ≦ 最大径300 mm 程度)が複数設けられる場合は,開口によって切断される鉄筋と同量以上の鉄筋を開口を避けて補強する.開口の間に鉄筋を通す場合の開口のあきは, かぶり厚さを考慮して少なくとも70mm 以上確保する必要がある.
開口を連続して設ける場合は,解説図9.16 のようにスラブの長辺方向を避けて短辺方向に沿って開口を配置するか,小梁を設けるようにする.
解説図9.16 小開口の配置
(e)スラブ配筋の間隔を約50mm 以下の範囲で変えることにより,鉄筋を切断しないで円形の小開口が設けられる場合は,スラブ筋をずらして配筋するのがよい.鉄筋を切断する場合には切断した鉄筋量以上を開口脇に配筋する, スラブ筋を緩やかに曲げることで鉄筋を切断せず開口が設けられる場合には,鉄筋を折り曲げてもよいが,最大折曲げ角度を設計図書で指示する必要がある.
あなたは一体なぜ鉄筋屋さんが怒ったのか?
分かりましたか?
理由は
設備屋さんがスラブにスリーブを設置するために
鉄筋を曲げて配置したのですが曲げ角度が鉄筋工事の
基本的な曲げ角度である1/6以上の極端な曲げ方をしたのが原因です。
しかし
大工さんが取り付ける避難ハッチやドレン、樋のスリーブなどでは
冒頭の問題は1割も起きません。もし、起きたとしても
「鉄筋屋さんのミス」がほとんどなのです。
なぜなら
大工さんは鉄筋屋さんが配筋する前に先程の金物を取り付けているので
鉄筋屋さんは、金物を適正に避けて補強を行って施工するからです。
でも
設備屋さんの場合は、鉄筋屋さんがスラブ配筋を終えた後に
夜な夜なスリーブを入れるので大工さんとはタイミングが逆になり、
結果的に品質を無視した開口補強要領になっている場合があるのです。
そこで
設備屋さんに
「大工さんみたいに先にスリーブ入れたら?」
と提案したことが有るのですが
「いやいや、そんなことしたら全部蹴っ飛ばされますよ…」
という返事が帰ってきた事を覚えてます。
最終的には、スラブに書いたスリーブの位置を出来るだけ避けて
配筋をしてもらうことで検査の指摘回数を減らそう。という事にしました。
今は地域や元請けや建物の規模感などによって違うとは感じますが、
躯体業者と設備業者の間では今でも
「設備屋なんか、建築の後でやれば良い」
という風潮が残っているでしょう。
でも
躯体業者の年配の人に聞くと
「昔の電気屋なんかカタギじゃないような人が沢山いて無茶苦茶してたよ。
だから、こっちが一方的に設備屋をいじめている訳じゃないよ」
と、建築業界の根深い確執なのでしょうね…。
つまり
鉄筋屋と設備屋の間でしばしば発生するスラブ筋とスリーブを巡る
問題に対する根本的な問題とは、鉄筋を全て配筋した後に
鉄筋のプロフェッショナルではない設備屋さんが開口補強を
行うために補強要領が悪くて、検査で指摘されるという状況です。
これは
建築業界の長い慣習やきっと地域性などもあったりして
簡単には解決できないかも知れませんが問題解決への
手を打つのに一番効果的なのはあなたの
「この現場ではこうしよう!」
という現場を動かしていく上での方針付けが非常に効果的です。
現場監督として作業員さんに働きやすい環境を提供するために
様々な指導を行うのが役目の1つですからね。
しかし
あまり調子にのってしまうとこちらの記事のように
間違いを起こしてしまうかも知れませんので気を付けて下さいね。
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