鉄筋の重ねアーク溶接継手(フレア溶接)と言われても
もしかして、今の若い人にはピンとこない人も多いかも。
とこの記事を書きだした時に感じました。
「地業工事では杭頭補強筋を溶接しているじゃない?」
と答えることが出来たあなたは頭が柔らかいと感じます。
しかし、地業工事ではなく鉄筋工事として考えると、
他に鉄筋を溶接する場面というのはあまり無いかも知れません。
ちなみに
私が冒頭に「今の若い人にはピンとこない人も多いかも」
と言ったのは理由があります。それは、最近ではほとんど
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の建物が無いからです。
私が新入社員のころはマンションでも12階くらいより
高いマンションは鉄筋コンクリート(RC)造ではなく、
鉄骨鉄筋コンクリート(SPC)造が一般的でしたが、
最近はもっと高い建物でもRC造で設計されていて、
SRC造が採用される頻度は本当に減ってきています。
では
SRC造であれば何故フレア溶接が不可欠なのかというと
「割フープ」が必ず1フロアに柱毎にあるからです。
割フープとはこの写真の四角で囲まれた部分の梁と干渉する
柱の部分(パネルゾーン)に柱筋のフープ筋を設置する時に
2つに分割して鉄骨梁にあらかじめあけておいた孔に
フープ筋を通して溶接で接合する形式のフープ筋です。

だから
SRC造の現場の場合は、コンクリートの打設前などに
鍛冶屋さんを呼んで鉄筋を溶接してもらっていました。
また
他には、スラブの仮設開口や施工上後工区にせざるを得ない箇所の
スラブ筋などを正規の定着長さにするために溶接して継ぎ足す
という方法で使用されている人がいるかも知れませんね。
それから
重ねアーク溶接継手(フレア溶接)に必要な溶接長さは
一般的に片面10d、両面5dの溶接長が必要ですが、
たいてい両側から溶接しやすいというケースは少ないので
片面10dなのでD13であれば余裕を見て150mm程度は
溶接できるような計画にすることが重要です。
そこで
一番鉄筋を溶接するときに工事監理者さんから言われるのは
「点溶接(スポット溶接)」をしないように!です。
5dとか連続的に溶接すると鉄筋の断面欠損が問題にならないのですが、
部分的に点溶接を行うと、アークストライクが生じて
鉄筋の断面欠損が起こる可能性が非常に高いので、溶接を行う場合は
しっかりと事前に計画をして進めて下さいね。
最後に
「建築工事監理指針(令和7年版上巻)」
の該当部分を確認して下さい。
P.353
(イ)重ねアーク溶接
重ねアーク溶接 (いわゆるフレア溶接)については、その溶接方法に応じて、7.6.3[溶接作業を行う技能資格者]の炭素鋼の手溶接に対する規定に従うJIS Z 3801(手溶接技術検定における試験方法及び判定基準)、 若しくは、炭素鋼の半自動溶接に対する規定に従うJIS Z 3841(半 自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準)に対応する試験に基づく能力を有するものとするのが一般的である。しかし、この試験が主として板材の溶接に対するものであることから、非構造用などの軽微な用途以外のフレア溶接の施工については、特記により技量付加試験を行うのが良い。
なお、JIS Z 3801及 び JIS Z 3841に基づく資格は、(―社)日 本溶接協会が評価試験により認証しており、手溶接又は半自動溶接の違い及び溶接する鉄筋のサイズにそれぞれ対応する基本級の資格 (F)を 必須とし、溶接の向きに応じる横向(H)、 立向 (V)の資格を有しているのが望ましい。
P.348
(5)D16以下の細径鉄筋に対する溶接は、重ねアーク溶接 (フレア溶接)とする。これについて、「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成 12年 5月 31日 建設省告示第 1463号)では、径が25mm以下の主筋等の場合にあっては重ねアーク溶接継手とすることができるとあるので、「標仕」の方が厳しく制限していることに注意する必要がある。フレア溶接継手は鉄筋と鉄筋又は鉄筋と鋼材を重ね合わせて、その重ねた部分にできる開先部分を溶接する方法である (図 5.6.3参照)。 主としてせ
ん断補強筋の接合に用いられ、高強度の鉄筋での実績はほとんどない。(―社)プ レハブ建築協会では壁式プレキャス トエ法のパネル間接合にフレア溶接を用いることから、「PC工法溶接工事品質管理規準(2004年)」 を定めて運用していたが、その内容は同協会「プレキャスト鉄筋コンクリートエ事施工技術指針」に統合。一部改定されている。同指針において、フレア溶接ができる鉄筋の種類の適用範囲は、JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)の規格品のうち、SR235、 SD295、 SD345と している。SD345以下の強度の鉄筋をフレア溶接継手によって全強継手とするための溶接有効長さは、「PC工法溶接工事品質管理規準」の規定と同様に、片面溶接で鉄筋径の10倍以上、両面溶接で鉄筋径の5倍以上を確保するものとする。
なお、同規準では、片面溶接はD13以下の細径鉄筋に制限している。
さらに、「プレキャス ト鉄筋コンクリー トエ事施工技術指針」において、フレア溶接継手の開先標準として、表5.6.1が定められているので、参考にするとよい。
図5.6.4 フレア溶接継手の例
表5.6.1 フレア溶接継手の開先標準 鉄筋径
(呼び径)L
ビード幅
(mm)A
(mm)B'
母材溶込み幅
(mm)B
(mm)C
ビード高さ
(mm)a
余盛り
(mm)b
あき
(mm)φ9 6~8 3.0 4.0 8 4~6 0~1 0.5~1.5 φ13 7~9 3.5 5.0 9 5~7 0~1 0.5~1.5 D10 6~8 3.0 4.0 8 4~6 0~1 0.5~1.5 D13 7~9 3.5 5.0 9 5~7 0~1 0.5~1.5 D16 8~11 4.0 5.2 10 6~8 0~1 0.5~1.5 D19 9~12 4.5 6.2 11 7~10 0~1 0.5~1.5 D22 10~14 5.0 7.2 12 8~12 0~1 0.5~1.5 D25 12~16 6.0 8.6 14 10~14 0~1 0.5~1.5
つまり
フレア溶接で私が考えている注意ポイントとは
連続しての溶接でなく「点溶接」としてしまって
アークストライクによる断面欠損が出来ないような
形状・計画を考えて、実際作業する職人さんに
しっかりと伝達することだと考えています。
だから
安易に溶接や熱を加えてしまうという行為を
工事監理者さんはは非常に嫌がられる事が多いです。
こちらの記事でも同様の事が書いてありますので
合わせて読むことで理解を深めることが出来ますよ。
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