前回の柱編に続いて今回は「壁編」です。
今回は壁の中でも特に「開口」にテーマを絞りましょう。
なぜなら
壁の開口部は打設中にも、上手くいったと思った打設後にも
「失敗だ~!」と感じる場面が非常に多いからです。
まず
比較的幅の広い開口部は、端の一部分のみ蓋をしていて中央部は開放という
パターンが多いのでは無いでしょうか?
なぜなら
スラブ上部からのバイブレーターだけで、直接届かない開口の下部まで
密実に充填させる事が難しいので、開口部の下部分に蓋をせずに
目視にて充填状況を確認する事が出来るからです。
また
場合によっては、開口部の下部に上手く充填が出来ない時には、
開口部の下部へ直接コンクリートをバケツなどで投入して叩いて
締め固めを行うことが出来ます。
しかし
当然ながら、打設するコンクリートが柔らかすぎたり、バイブレーターを
過度に掛けすぎたりすると開口部からコンクリートが噴き出します。
せっかく「確認の為」に開けておいた部分が仇(あだ)となるので、
開口部廻りのコンクリート打設は、可能であれば下に降りて
充填状況を確認する事をオススメしますよ。
では
コンクリートが噴き出してトラブルになるのならやっぱり蓋をすれば?
とあなたは考えるかも知れませんね。確かに蓋をすれば「噴き出す」
というトラブルは有りませんが、ごく稀に
「コンクリートが入らないから、やっぱり開けてくれ」
というリクエストが入ることも有るので、基準階を繰り返すような
マンションなどでは状況に応じて改善していきましょう。
それから
開口部の下部を蓋をした時に起きるトラブルで多いのが
空気孔のあけ忘れによる充填不良です。
具体的には
開口部の両サイドから廻り込んできたコンクリートが
開口部の下部まで到達したときに、型枠内の空気の逃げ場が無くなり
それ以上、コンクリートが充填されずに脱型すると開口部の中央下部に
空洞が出来ているという不具合が発生してしまうのです。
「そんな空気も逃がさない位の型枠の精度なの?」
とあなたは疑問に感じるかも知れませんが、現実的には
空気孔の有無ではっきりと効果の違いが現れることを私自身の経験で
実感しているので、タマされたと思って打設前にはチェックして下さい。
更には
小窓などの小さな開口の場合は「そもそも開口だと認識されていない」
ままに打設してしまうことがあります。
具体的には
ある程度の開口部の場合は、型枠自体で開口になっており
向こう側が見えるような造りになっているので少なくとも
「開口がそこに存在する」事は認識できます。
しかし
小さな開口の場合は、型枠の片面若しくは両面を「壁」の様に組立られて、
コンクリート打設時には「開口部」は外観から判別出来ない場合があります。
なぜなら
型枠大工さんもいちいち開口の形状に組み立てるより、
壁面として組み立てて開口部分(ダキ部分)の型枠を打ち付けて、
鉄筋を組んだ後にバサッと一面壁のように組立をした方が楽だからです。
すると
「あれ~、何でいつもこの窓枠で充填不良が起こるのだろう~?」
という謎の現象が起きてしまうのです。実際に私も経験しました。
たから
その様に一見開口部だと分からない場合は、型枠大工さんの了解を得て
スプレーで目立つように開口が有ることを明示しなければいけません。
もしも
あなたが同じ様な場面に遭遇した時に、同様の失敗をしないように
参考にして頂ければ嬉しいです。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.414
(c) 柱協の開口部下部等にコンクリートを充填させるために、柱に打ち込まれているコンクリートを引き出してはならない (図 6.6.4 参照)。
図6.6.4 壁の打込み(柱脇に開口)
P.416
図 6.6.7 各部位に起こりやすい打上りの欠陥
つまり
壁に関するコンクリートの打設中のポイントは「開口部」についてが
実は重要なポイントだと考えています。
具体的には
- コンクリートが柔らかすぎたりする場合は、開口部の下部を蓋していないと噴き出す危険性がある
- 開口部の下部を完全に蓋をした場合、適度に空気穴を空けておかないと完全に充填することが出来ない
- 小さな開口であれば、両側を見通すことの出来る開口の形で型枠を加工しない場合があり、開口があると認識されない場合がある
という3つの場合が主なトラブルの原因であり、コンクリートの打設当日に
しっかりと管理しないとイケない事項から、図面が頭に入ったうえで事前に
どこが開口であるか?を明示しておくべき事項もあるので準備は大切です。
だから
何気なく現場を歩いているだけでは、型枠を脱型してから
「あれ?何で充填不良が出来ているんだろう?」
と原因が分からない事もあるはずなので「気付く力」を養っていきましょうね。
今回は「壁編」ですから、あなたにはこちらの「3つの壁」を乗り越えて欲しいです。
↓ ↓ ↓
この記事へのコメントはありません。