平成22年の建築工場標準仕様書でコンクリートの構造体強度補正値(S)が
採用されましたと建築工事監理指針に書いてありました。
私が外車に入って10年位した頃ですかね。
それまでは、温度補正値(T)という値を使用していました。
基本的には、現在の構造体強度補正値(S)と同じ様な考え方で
コンクリートの強度が発現しにくい寒い時期に強度を補正するものでした。
そして
温度補正から構造体強度補正値に変わった後に
生コン工場の技術者さんと話をしていた時の話が印象的だったので
今回、お伝えしておこうと思い出して記事にしました。
それは
「今まで夏場は補正値なかったのに、
今度から夏場にも補正が入るってどうなん?」
と私が聞いたときに、
「いや~、今までも実は夏場には若干セメントの量を増やしていたんですよ。」
「夏場って意外にも強度が出にくいのです。
だから、今までは生コン工場のプライドとしてセメント量を自主的に
増やしていたのが、今度から正式にセメント量を増やせるので
実は助かっているんです」
という回答がかえってきたのです。
私の認識では、夏場は気温も高いので
ガンガン強度が出ると思い込んでいました。
だから
夏に躯体が上棟して支保工をいつ解体しようか?
とあまり悩むことなく冬場より積極的な工程を組んでいましたが、
裏側では夏場は強度が出にくいのが実情だったのです。
本当にそのような理由で構造体強度補正値(S)が出来たかは不明ですが、
自分の感覚から事実が大きくずれていたのでとても印象的な出来事でした。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.386
(ア) 調合管理強度及び調合強度
(a) 調合管理強度
平成19年版「標仕」では、調合管理強度(Fm)に相当する値は、設計基準強度(Fc)、構造体コンクリートと供試体強度との差(ΔF = 3N/mm2)、気温によるコンクリート強度の補正値(T)を考慮して(Fc + ΔF + T)としていたが、平成22年版「標仕」からは、調合管理強度は、(ΔF + T)に代わって、セメントの種類及びコンクリートの打込みから材齢28日までの予想平均気温に応じて定められた構造体強度補正値(S)を取り入れ、(Fc + S)に改められている。
(b) 構造体強度補正値(S)は、セメントの種類、予想平均気温の範囲に応じて「標仕」表6.3.2に示すように、3N/mm2又は6N/mm2としている。また、平成28年版「標仕」からは、平成12年 建設省告示 第1446号(平成28年国交省告示 第814号)の改正に伴い「標仕」表6.3.1に普通エコセメントが追加され、「標仕」表6.3.2に「JASS5」の27.5b項を基に普通エコセメントの構造体強度補正値(S)が追加された。
「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)(平成31年版) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
(b) 構造体強度補正値(S)は、特記による。特記がなければ、表6.3.2 により、セメントの
種類及びコンクリートの打込みから材齢28 日までの期間の予想平均気温に応じて定める。表6.3.2 構造体強度補正値 (S)
セメントの種類 コンクリートの打込みから材齢28 日までの期間の予想平均気温θの範囲(℃) 普通ポルトランドセメント
高炉セメントA種
シリカセメントA種
フライアッシュセメントA種0≦θ<8 8≦θ 早強ポルトランドセメント 0≦θ<5 5≦θ 中庸熱ポルトランドセメント 0≦θ<11 11≦θ 低熱ポルトランドセメント 0≦θ<14 14≦θ 高炉セメントB種 0≦θ<13 13≦θ フライアッシュセメントB種 0≦θ<9 9≦θ 普通エコセメント 0≦θ<6 6≦θ 構造体強度補正値 (S) (N/mm2) 6 3
つまり
コンクリートの構造体強度補正値(S)が出来た経緯とは、
構造体強度補正値が出来る前は、温度補正(ΔT)が存在しました。
その、温度補正のある頃は強度の出にくい気温の低い時期に補正を
かけていましたが、生コン工場の技術者から言わせると、
「夏の暑い時期も強度が出にくい」という事は分かっており、
こそっとセメント量を増やして調整していたそうです。
だから
大っぴらに夏場に補正値が掛けられるので経営的にも助かりますね。
かつて所定の品質を出すために自腹を切って対応していたものが、
ΔΘとして補正値に単価が付けば生コン工場は助かります。
あっ
助かると言えばこれ!もしも、あなたが新米現場監督でなく
やむにやまれぬ状況でこちらのページにたどり着いたのなら
こちらの記事を読むと、あなたの部下が思い通りに働いて
くれるかも知れませんよ。
↓ ↓ ↓
この記事へのコメントはありません。