フープ筋(帯筋)やスタラップ(あばら筋)などロの字型の形状を
しているものは両端部を135°フックとして隅部の主筋に引っ掛けて
固定しているのが通常ですが、フックを使用せずに端部同士を
溶接にて接合しているのが「溶接閉鎖型フープ」です。
以前お伝えしたことのある「高強度せん断補強筋」も同じ様に
ロの字型の場合は、溶接にて接合をしていますが、違いとしては
溶接閉鎖型フープは普通の強度の異形鉄筋をしようします。
では
今回は溶接閉鎖型フープのメリットとデメリットをお伝えします。
まず
1つ目のメリットは「鉄筋組立て時の剛性確保に適している」ことです。
2つ目のメリットは「部材の横拘束の性質が向上する」ことです。
具体的には
柱の組立時のフープ筋は端部が「つめ」と呼ばれる135°のフック形状に
なっているが重なっている部分同士は結束されていません。
対して、溶接閉鎖型フープは端部同士が溶接で接合されているので
1つの材料として在来のフープより剛性が高くなり、現場での施工性も
高いくなっていくのです。
次に
3つ目のメリットは「コンクリートの充填性もよくなる」ことです。
在来のフープであればフープの端部の「つめ」の部分が
柱の隅部へ対角線上に交互に配置されます。
すると、柱の端部へのコンクリートの充填性が落ちやすくなります。
対して、溶接閉鎖型フープの場合は、端部の「つめ」の部分が
無いためコンクリートの充填性が良くなるのは想像しやすいですね。
最後に
デメリットをあげるとすると、「いちいち発注しなければイケない」ことと、
「現場への搬入が他の材料と別々になること」では無いでしょうか?
具体的には
在来のフープであれば、鉄筋屋さんが勝手に材料を拾って、加工して、
現場まで勝手に搬入してくれます。
しかし
溶接閉鎖型フープであれば、工場に現場搬入日の数週間前には
材料の発注を行い、現場では鉄筋屋さんの車両とは別に調整が必要です。
もちろん、大した手間にはならないかも知れませんけどね。
最後に
「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の該当部分を確認して下さい。
最近は,工場で加工した突合せ溶接閉鎖形の帯筋・あばら筋が大量配筋,高精度確保のため使用されている.これらは在来の135°フック付帯筋・あばら筋に比べて, 鉄筋組立て時の剛性確保にも適しており, 部材の横拘束の性質が向上するとともにコンクリートの充填性もよくなる.
突合せ抵抗溶接は,製品規格に指定された溶接条件および品質管理の下で行う.異形鉄筋D10~D16の場合にアプセット溶接,カーボン量の多い高強度の鉄筋でD10~D16の場合にフラッシュ溶接などが使われている.これらを使用する場合には,溶接部の信頼性確保の点から指定性能評価機関などにより性能が確かめられたものとし,設備の整った工場でその製品規格,品質基準に従って製作されたものを使用する.
なお, 熱処理を行うと, 鋼材としての性質が変わるので,加工場での曲げ加工は冷間加工としなければならない. 鉄筋の曲げ加工は,加工機の性能が向上し,現在ではD51まで十分冷間加工が可能である. また,自動曲げ機能を備えた自動鉄筋折曲げ機もある.
つまり
溶接閉鎖型フープ(帯筋)の3つのメリットとデメリットとは
- 鉄筋組立て時の剛性確保に適している
- 部材の横拘束の性質が向上する
- コンクリートの充填性もよくなる
でありますが、3つのうち現場としてのメリットが大きいのは、
フープなどの端部に余計な無いことからコンクリートの充填性が
良くなることだと私は感じていますよ。
そして
デメリットとしては、溶接閉鎖型フープを毎フロア毎に発注したり、
鉄筋屋さんが他の材料と一緒に積んできてくれる場合もありますが、
現場に直接搬入する場合もあるので、搬入調整などの現場の段取りや
手間が増加することがあげられます。
更に
工場で製作する溶接閉鎖型フープやスタラップなどは普通の強度の他に
高強度の材料を使用して製作されることも多いので、高強度筋の記事も
合わせて読むことで理解がより深まりますよ。
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