型枠の組立は「安全」と「品質」の2つの面を考慮して行われています。
まず
「安全面」から説明を行うと簡単にまとめると以下のトラブルとなります。
- 型枠支保工のピッチや配置の仕方が悪いとスラブの崩落事故が起きる。
- 柱や壁の締め固めのピッチが悪いとコンクリートの側圧に耐えきれずに型枠が外れ大量のコンクリートが漏れ出す
そして
「品質面」のトラブルは、
- 型枠の締め固めに用いる材料の配置やピッチが悪いと想定以上に型枠が外側にはらんで真っ直ぐの精度が出ない
- 型枠が斜めになってしまったらサッシやタイルなどの仕上げ材が納まらない
という内容が主な項目です。
だから
型枠を組み立てる時には「構造計算」を行いながら
計画を行うことが非常に重要なのです。
しかし
「構造計算」という言葉を聞いた瞬間に「思考ストップ」に
あなたはなっていないでしょうか?
実は
型枠の構造計算の基本はそんなに難しくありません。
考え方さえ理解していれば「実際の計算はソフトに任せば良い」のです。
そこで
超簡単に型枠の構造計算について手順の説明を行うと
- 型枠に掛かる荷重(コンクリート、型枠の自重など)を設定します。
- コンクリートを打設するスピードを設定します。
- せき板(コンパネ)、内端太や外端太(鋼管やバタ角など)、セパレーターの材料とピッチを設定します。
- 3で設定した材料それぞれについて「どのくらい材料が変形するか?」を求めます。
- 4で求めた変形量の合計が目標の変形量に納まっていれば合格です。
つまり
型枠の構造計算とは型枠がどれだけ変形するか?を求めて、
変形量の合計が目標値以内であることを確認する作業なのです。
でも
「材料のピッチってどのくらいが適正か?分からない」
とあなたは感じているかも知れませんね。
そこで
大切なのが「計算ソフト」なのです。
なぜなら
入力マスの数値を変えるだけで瞬時に「OK」「NG」の判定を
出してくれるので様々な数値を入れて試すことが非常に容易だからです。
そして
数値を色々変化させると自然とあなたの知識として
「この位のピッチなら大丈夫だけど、ここまでいくと危ない」
という感覚が知らず知らずの内に身に付いて来るからです。
すると、現場を巡視したときに
「あそこの型枠のピッチひろくないか?」
と気付くことが出来るようになりますからね。
この感覚を簡単に身に付けるために「計算ソフト」があるのです。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.425
6.8.1 型枠一般
(1) 型枠の構成は、コンクリートに直接接するせき板、せき板を支える支保工及びせき板と支保工を緊結するセパレーター、締付け金物等からなる。せき板には通常、脱型を容易にするためはく離剤が塗られている。支保工は、床・梁等を支える根太、大引、支柱(パイプサポート)、支保梁、支柱の座屈を防止する水平つなぎ・ブレースのほか、柱、壁等のせき板の位置を保持するとともに転倒を防ぐ内端太、外端太、建入れ直しサポート、チェーン等から構成される。在来工法による一般的な型枠構成例を図 6.8.2 に示す。
図 6.8.2 一般的な型枠構成例 (型枠の設計・施工指針より)
(2) 型枠には、コンクリート自重、打込み時の振動や衝撃による作業荷重、コンクリートの側圧、水平荷重等が作用するので、その荷重に対して安全であることを構造計算によってチェッ クすることが重要である。また、必要な仕上り寸法・精度が得られるように型枠剛性についても検討することが必要である。「標仕」6.2.5 では、「部材の位置及び断面寸法の許容差」と「コンクリート表面の仕上り状態 (目違い・不陸等及び平たんさ)」が規定されており、これらを満足するように型枠を設計する。
型枠の構造計算の方法は、(一社) 日本建築学会「型枠の設計・施工指針」に詳しく述べられているので、それを参考にするとよい。
次に型枠の構造計算に関する基本的事項を示す。
(ア) 型枠材料の許容応力度等
(a) 型枠の構造計算に用いる材料の許容応力度は、次のとおりとする。
① 支保工については、労働安全衛生規則第 241条に定められた値
② 支保工以外のものについては、次の法令又は基準等における長期許容応力度と短期許容応力度の平均値
1) 建築基準法施行令第 89 条及び第 90 条
2) (一社) 日本建築学会「鋼構造設計規準」、同「軽鋼構造設計施工指針」又は同「木質構造設計規準」
木材の繊維方向の許容曲げ応力、許容圧縮応力及び許容せん断応力の値について、労働安全衛生規則第 241 条に定められている。
(b) 型枠支保工に用いる鋼材の許容応力度は、労働安全衛生規則第 241 条において次のように定められている。
① 鋼材の許容曲げ応力及び許容圧縮応力の値は、当該鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の 4 分の 3 の値のうちいずれか小さい値の 3 分の 2 の値以下とすること。
② 鋼材の許容せん断応力の値は、当該鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の 4 分の 3 の値のうちいずれか小さい値の 100 分の 38 の値以下とすること。
③ 鋼材の許容座屈応力の値は、限界細長比に応じて計算を行って得た値以下とすること。
(c) 型枠合板の断面性能、その他型枠に使用される材料の断面性能、支柱の許容荷重、締付け金物の許容耐力等は、「型枠の設計・施工指針」、メーカーのカタログ等を参照されたい。
(イ) コンクリート打込み時の荷重
(a) スラブ型枠設計用荷重(T.L)は、実状に応じて定めるのが原則であるが、通常のポンプ工法の場合 6.8.1 式により算出する。
T.L =D.L + L.L (6.8.1 式)
D.L (固定荷重) : コンクリー卜、型枠等の自重で、普通コンクリートの場合は 23.5 x d (kN/m2) に型枠の重量として 400N/m2を加える (d = スラブの厚さ(m))
L.L (作業荷重+ 衝撃荷重) : 「労働安全衛生規則」から1,500 N/m2 以上とする。
(b) 型枠設計用側圧は、「JASS 5 鉄筋コンクリー卜工事」によればよい。
(ウ) 曲げを受ける型枠各部材の計算方法
型枠材の計算方法には、定められた基準はないが、一般的には次により、構造計算を行い定める。
① 合板せき板の場合は、転用等による劣化を考慮し、単純梁として扱う。
② 合板以外のせき板、根太、大引等は、単純梁と両端固定梁の平均とする。
③ 名部材のたわみは、3 mm 以下とするが、2 mm 程度を許容値とすることが望ましい。ただし、打放し仕上げ、の場合は、1 ~ 2 mm 程度とすることが望ましい。
なお、構成部材の総たわみ量は、コンクリートの仕上りの平たんさ等を考慮して適切に定める。④ 部材の応力及びたわみの計算に用いる公式は、「型枠の設計・施工指針」を参考にするとよい。
(エ) 水平荷重
型枠支保工の倒壊等を防止するため、型枠支保工の設計に当たっては、労働安全衛生規則第 240 条に基づき、次に示す水平荷重が作用しても安全な構造のものとする。
① 鋼管枠を支柱として用いるものであるときは、当該型枠支保工の上端に、設計荷重(鉛直荷重) の 100 分の 2.5 に相当する水平方向の荷重が作用しても安全な構造のものとすること。
② 鋼管枠以外のものを支柱として用いるものであるときは、当該型枠支保工の上端に、設計荷重 (鉛直荷重) の 100 分の 5 に相当する水平方向の荷重が作用しても安全な構造のものとすること。
つまり
型枠工事において支保工や壁などの構造計算を理解して
おかないと型枠大工さんが間違えて施工しまった場合に、
「スラブの崩壊」や「壁型枠からコンクリートが噴き出る」
などの重大な事故に発展する危険性が高いのです。
しかし
文章で何回読んでも正直「理解できない」と言うのが
私の「本音」であり、最速で理解するためには実際に
計算をして、数値を色々いじって「OK」「NG」の境目
を知ることだと考えています。
その為には
私が作成している仮設構造計算システムがあるので
あなたに苦手意識があれば是非ダウンロードして試して下さいね。
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