スリットと言えば基本的には「型枠工事」の範囲です。
「私は鉄筋担当だから関係ない」
と心の中で感じていませんか?
そこで
今回は鉄筋担当者として理解しておくべきスリットの知識をお伝えしましょう。
でも、鉄筋担当と型枠担当なんて次の現場ではひっくり返ったり、
両方担当したりするので関係なく覚えておいて欲しいですけどね。
まず
スリットには、完全スリットと部分スリットがあります。
2つのスリットは構造の考え方が違います。
完全スリットでは、鉄筋は完全に縁を切って分離して配筋しますが、
部分スリットでは一部の鉄筋をつなげます。
最近は、9割以上は完全スリットなので、
鉄筋はスリット部で縁を切って配筋します。
次に
先程、完全に縁を切って配筋すると言った完成スリットですが、
実際には、D10で400ピッチ程度で鉄筋が配置されています。
「言ってる事が違うじゃないか!」
と怒らないで下さい。
実は
完全スリットで縁を切っている部分同士にも、
転倒防止として鉄筋が破断しない程度で鉄筋で
連絡されているのです。
このピッチは9割以上の設計図書に記載されているので、
指定された通りに配筋しましょう。
それから
今回述べた鉄筋はお互いの壁の応力を伝えるために
設置するものではないので、鉄筋の片側に「カバー」を
設置する納まりになっている事があるので仕様書をよく確認しましょう。
3つ目は
スリット部分は外部からの雨水の浸入の恐れのある場所は
シーリングなどで防水するのですが、基本的には雨水などが
浸入するという考えのもとに、使用するつなぎ鉄筋には
「防錆処理」が特記仕様書やスリットの詳細図に書いてある
場合があるので気を付けておきましょう。
なぜなら
防錆処理を行った鉄筋は特殊だし単価も高いので発注する前に
先輩に確認してもらった方が無難かも知れませんからね。
最後に
「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.236
e .スリット
壁の剛性を無視するために設けられるスリットは,構造体に及ぼす影響を極力小さくすることが必要である.スリットには完全スリット型と部分スリット型があるが,本指針では完全スリット型を推奨する.スリット輻は架構の最大変形だけでなく, スリット材(防水材, 防火材,遮音材など)の変形能力も考慮して決める必要がある.
スリットを設けた壁は4周の3辺をスリットとする片持壁となることが多いため,地震時の転倒防止を計らなければならない.このためスリット部分に鉄筋を設ける例があるが,地震時に鉄筋がどの程度構造体に影響を及ぼすのか把握し,さらに鉄筋が破断せず転倒防止に役立つよう計画されなければならない.
これらか明確でない場合には, 鉄筋を設けても地震時に壁が転倒しないよう片持壁として配筋設計するのがよい.また,この鉄筋の破断を防止し構造体に及ぼす影響を小さくするために,鉄筋の片端にチューブ等をかぶせ軸方向力に抵抗させないなどの工夫も考えられる.なお,この鉄筋には防錆処理を施すことを設計図書に指示する.防錆処理には溶融亜鉛めっきやエポキシ樹脂塗装鉄筋などがある.
つまり
壁に設置されるスリットについて鉄筋担当者が理解すべき3つの事とは、
- 設置されるスリットが完全スリットか?部分スリットか?で配筋が変わる
- 完全スリットの場合は壁の転倒防止のためにつなぎ筋が必要だが同時に応力の影響を最小限にするためにカバーの検討も必要
- 完全スリットのつなぎ筋は雨水などの浸入を考慮して防錆処理が必要
このように
スリットと言えば型枠工事というイメージが大きいですが、
実際には鉄筋工事側でも施すべきことがあります。
例えば
こちらの梁の貫通孔の話についても本来は「設備工事」側の
都合で鉄筋工事として対応しているものの1例ですよね。
よい機会なので合わせて読んで理解を深めて下さいね。
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