「天気予報でコンクリートの打設日が雨だったら
あなたはどうしますか?打設を中止しますか?」
雨の日にコンクリートを打設する事が品質的に悪い事は分かる。
けど、打設後の工程の段取りも済ませているし今さら変えたくない。
というのが本音なのではないでしょうか。
「分かっちゃいるけど止められない」という事で、小雨くらいなら
仕方なく打設をするというのが現実なのでは?と感じます。
ここで
雨の日にコンクリートを打設すると「何が悪いのか?」について
簡単におさらいをしておきましょう。
コンクリートに多量の雨水が混入する事で、コンクリート中の
水セメント比が大きくなるので所定の強度が得られなくなる。
と言うのが一般的に雨の日にコンクリートを打設する事を
良しとしない大きな理由です。
では
「どのくらい雨水が混入すると強度低下が起こるか?」
という問いに対して、あなたは答える事が出来るでしょうか?
そこで、10年くらい前の日経アーキテクチュアだったと
思いますが、その記事に掲載されていた事を紹介します。
まず
小雨程度であれば、コンクリートの品質に大きな影響は与えません。
3~5mm/h以下(だったと気がする)降雨量であれば問題ない。
という事でした。
具体的には
目を開けて上が向ける程度の降水量なら問題ないと考えられます。
しかし
独立柱などは、少ない雨量でもスラブから流れ込んでくると
雨水が溜まりやすいので、柱や壁の打ち継ぎ部は中央が高く、
雨水が溜まりにくい形状にすることが重要です。
また
柱や壁の下部に必要に応じて水抜き穴を設置する事も大切で、
打設の進捗にしたがって適宜開ける方が良いかも知れません。
更に
雨水の混入を予想して水セメント比の大きめな供試体で試験してみる
という事が記載されてた記憶があります。
例えば、3mm/h分の水分を足した供試体を試験的に作成して
強度試験をすると「ここまでは大丈夫」という証拠になります。
別に、全ての配合に行う必要はないので、主要な配合で試して
みてはいかがでしょうか。
最後に
小雨でも、コンクリートの品質に影響が出る事もあります。
それは、「床の押え」工事です。たとえ1mm/hの雨でも、
コンクリート上面の「セメントペースト」が流されてしまうと
左官さんが押える事が出来なくなり、所定の仕上が得られません。
更に
コンクリート上面の状態は、砂が浮き出ていてザラザラに
なっているので、研磨をして補修が必要となりますが、
本当に細かい所まで突き詰めると、研磨する事により、
「断面欠損」してしまう恐れがあります。
だから
雨の日にコンクリートを打設する場合で、左官さんによる
押えのある部位では、床の研磨などの処理を考慮して
スラブを5mm程度高く打設するという方法も有効ですよ。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.412
(1) 多量の雨が降っている時にコンクリートを打ち込むと、雨水がコンクリート中に入って水セメント比が大きくなり、所要の強度が得られなくなる。また、コンクリート温度が 2℃ 未満となる低温時にはセメントの水和反応が遅れ、初期凍害を受けるおそれがある。このような場合には、コンクリート中に雨水が入らないようにしたり、コンクリート温度を高めるとともにその後の養生方法を適切に定めるなどの対策を講じたうえで打ち込むことが必要である。このような対策を取らないで打ち込むと所要の品質を確保することが困難になる。
つまり
雨の日にコンクリートを打設しても良いのか?という素朴なについては、
雨水がコンクリート中に入って水セメント比が大きくなるので所定の強度が
得られないので避けた方が良い。というのが回答です。
しかし
現実的には、工程的な問題やその他様々な事情がある中で、雨天でも
打設せざるを得ない場合はあります。であれば、「言い訳」をあらかじめ
用意しておくことは、後ろ向きなようで前向きな方法だと感じていますよ。
例えば
- 小雨なのか豪雨なのか、打設時の降水量を記録しておく。3~5mm/hなら大丈夫
- 柱や壁の打ち継ぎ部は中央が高く、雨水が溜まりにくい形状にする
- 柱や壁の下部に必要に応じて水抜き穴を設置する
- 雨水の混入を予想して水セメント比の大きめな供試体で試験してみる
- 床の仕上げを考慮してスラブを5mm程度高く打設する
また
マンションなど「中○○日」で工程が組まれていて、遵守しないと工期が厳しい。
という現場であれば、少々の事ではスケジュールを変えることは出来ません。
理想と現実の間を何となく上手くすり抜けて運営していくしかありません。
だって、工程管理は下記の考え方が基本ですからね。
↓ ↓ ↓
この記事へのコメントはありません。