梁の主筋の端部は柱の向こう側に同様の梁がない限りは
柱内へアンカー定着となります。
しかも
アンカー定着の基本としては、梁の上端筋は曲げ下げ方向へ、
逆に下端筋は曲げ上げる方向へ納めています。
すると
梁せいの低い場合などは「アンカー筋同士が干渉する」という
リスクが発生してしまうのです。
アンカー筋同士が干渉すると、主筋の水平投影距離の確保が難しく、
コンクリート打設時における充填に関する不具合も発生しやすくたります。
では
「梁の下端筋は曲げ上げでなく、曲げ下げでも良いのでは?」
というのが今回のテーマです。
最後に示す参考資料にも
「やむを得ない場合以外は採用しない」
と明記されていますが一体何故なのでしょう?
そこで
まずは、アンカー定着をすることによりどの様な影響が
他の構造体に及ぼすのか?について考える必要がありそうです。
何しろ、他に影響がないなら拒絶する理由もないですから。
すると
先程の続きに下端筋を曲げ下げた場合は、
「下柱に付加的な帯筋を配筋するなど特別な配慮をすることが望ましい」
とも書かれているのです。
ここで
勘の良いあなたなら理由が分かったかも知れませんね。
アンカー筋が柱と梁のパネルゾーンに納まっていない場合は、
はみ出ている部分について「補強」を促しているのです。
だから
梁の下端筋を曲げ下げることで、梁から柱へと伝えられる力の流れが
部分的に「漏れている」状態になっていて、「補強」することが
望ましい納まりになっているからです。
力の流れを「シンプル」にすることによって、建物へのリスクを
減らすために梁の下端筋は曲げ上げているのです。
最後に
「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の該当部分を確認して下さい。
P.208
P.215
(b)の梁下端筋を点線のように曲げ下げる納まりも,この指針ではやむを得ない納まりとして残した.ただし,下端筋の曲下げ定着は,定着強度が低下する上に柱梁接合部のせん断性能も低下するので,やむを得ない場合以外は採用しない.採用する場合にはRC基準(2010年版)の17条の解説を参考にして,下柱に付加的な帯筋を配筋するなど特別な配慮をすることが望ましい.また,下端筋を曲げ上げることは,梁筋が過密になっている場合に柱梁接合部へ納めにくいとの意見もあるが, 曲上げ定着の方が接合部内での力の流れが明解であり, 基礎梁の納め方と同じく曲上げ定着を標準的納まりとした.
つまり
梁の下端筋の端部の定着が曲げ下げでなく原則曲げ上げの理由とは、
接合部内での力の流れが明解になり、基礎梁と納め方が同じだからです。
しかし
無理やり下端筋を曲げ上げることは、梁筋が過密になっている状態では
上手く納めることが出来ない場合もありますが、「納めるのが難しそう」
「面倒くさいから」など安易な理由で勝手に変更せずに、必ず工事監理者
さんに確認を取ってからにして下さいね。
そして
工事監理者さんや設計者さんへ最速で返答を貰いたい場合は、
こちらのような質問の仕方もあるので参考にして下さいね。
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