パラペットの立上りは最上階と同時に打設しても、別々に打設しても
施工的にはどちらも可能です。
もしかしたら、あなたの現場の工期がなくて1日でも早く最上階の打設、
最上階の支保工の撤去を求められているのであれば、とりあえず最上階の打設範囲に
パラペットは含めずに、床まで打設しようと判断するかも知れません。
しかし
私は上記のような工期のない状況でも最上階の床とパラペットの立上りは
「同時に打設」を今回お伝えする3つの理由でし続けてきました。
工期的には2~3日のロスですが、私はそれを上回るメリットを実感しています。
まずは
パラペットの立上り部と床の打ち継ぎ部から漏水が発生する可能性が高いです。
一体として打設したものでもクラックは発生してしまうのに、
別々に打設すると肌別れして雨水などが浸入する危険性は否めません。
竣工当初はシーリングの効果があるでしょうが5年も経てば劣化します。
瑕疵の責任いかんに関わらず、良い建物にする為には屋上の防水の裏側に
水を廻さない対策をする方が品質的にベターです。
2つ目は
防水の上に押えコンクリートを打設する場合は、熱膨張により
立上り部が外部に押し出されてしまう危険性があるのです。
「そんなに押えコンクリートが膨張しても、パラペットまで押すか!?」
と私も最初は心の中で感じました。あなたも同様に感じているかも知れません。
しかし
実際に、熱膨張でパラペットが外部に押し出されている写真を見ると
信じるしか仕方が無かったです。
私の中の「感覚」と実際の「事例」とのギャップを感じた一例ですね。
3つ目は
立上り部際の水勾配の確保が難しく、斫り作業などが発生する危険性があります。
実は
ここだけの話ですが、これが私が「パラペットの同時打ち」を
心に決めた3つのうちの最初の理由です。
なぜなら
私もパラペットの後打ちを経験したことがあります。
その場合はパラペットの鉄筋にビニルテープを巻いて目印にしました。
しかし
コンクリート打設後にパラペットの内側の型枠を建て込む時に、
想定したレベルより高い所が何ヵ所か出てしまいパラペット際を
斫ってしまわないと納まらなかった事がありました。
「この斫り作業って完全に無駄な作業だな…」
と感じた事が私の中で1番の理由です。
更に
パラペットの打設後に防水下地の勾配を確認すると予想より
「水溜まり」になる所が多くて苦労した記憶があります。
だから
パラペットを同時打ちにすると型枠建て込み時の斫りも発生せず。
水勾配は型枠の下端で管理できるので水溜まりも発生しにくいので
工期が厳しくても私は「同時打設」を行っていますよ。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.412
(4) コンクリートの打込み区画は、工程上無理のない区画とするとともに、施工欠陥を生じやすい部位については特に注意して施工することが必要である。
(ア) パラペットの立上り部分は、漏水上の欠陥を生じやすく、また、ひさし・バルコニ一等は片持梁となりこれを支持する構造体部分との接合部に応力が集中する。このような部分は、構造体と同ーの打込み区画とすることが必要である。
(イ) 1回に打ち込むように計画した区画内では、コールドジョイント等の施工欠陥を防止するために、連続して打ち込み一体となるようにすることが大切である。
つまり
パラペットの立上り部を床と同時に打設するべき理由とは、立上り部を
防水部の床を打設した後に施工した場合には下記の3つのリスクがあるからです。
- パラペットの立上り部と床の打ち継ぎ部から漏水が発生する可能性が高い
- 防水の上に押えコンクリートを打設する場合は、熱膨張により立上り部が外部に押し出されてしまう危険性がある。
- 立上り部際の水勾配の確保が難しく、斫り作業などが発生する危険性がある
しかし
最上階の場合であれば、内装の仕上げ工程などもあるので
「とりあえず屋根を打って型枠支保工を1日でも早く撤去したい」
とあなたは考えるかも知れません。私も同様に悩むことがありました。
ただし
実際に両方経験した結果として「パラペット同時打ち」の方が
トータルでメリットがあると考えています。
結局
私は「現場は実験場」だと考えていて、「大きな取り返しのつかない失敗」
は出来ないけど、「取り返すことが出来る程度の失敗」はドンドン試して
自分の経験値として積む方が、あなたの現場監督人生トータルで考えると
「失敗」が非常にメリット側に働くと考えていますよ。
でも、「失敗はやっぱり怖い」という人はこちらを参照して下さいね。
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