「コンクリートの現場での施工性を上げるために向上させるのは
ワーカビリティーとスランプのどちらでしょうか?」
と問われればあなたはどの様に答えますか?
「言葉の意味だけを捉えるとワーカビリティーじゃない?」
「いやいや、スランプ15より18、21の方が施工性は上がるよ」
「そもそも、2つとも同じ意味なんじゃないの?」
と色々な意見が出てくると感じています。
では
今回は早速答えを「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」から拝借しましょう。
ワーカビリティーは、運搬、打込み、締固め及び仕上げの
フレッシュコンクリートの移動・変形を伴う作業の容易さと、
それらの作業によってもコンクリートの均一性が失われないような
総合的な性質であり、フレッシュコンクリートの流動性の
程度を表すスランプとは別の概念である。
つまり
コンクリートの施工性を上げるのはワーカビリティーであり、
ワーカビリティーは総合的な性質でスランプとは別の概念です。
どちらかと言うと、ワーカビリティーの中の1つの要素に
スランプが含まれるという形の方が理解しやすいですかね。
そして
あなたにとって身近な存在は「ワーカビリティー」よりも
むしろ「スランプ」ではないでしょうか。
建築工事では一般的にはスランプは15、18cmあたりです。
でも
「監督さ~ん!生コン固いよ!!
次からスランプ上げないと打てないよ!」
と怒られた事はあなたは無いですか?冒頭の答えで
「スランプ」と答えた人は大抵同じ経験があるはずです。
だから
生コンのデリバリーの人に「ちょっと柔らかめの18cmね」
というようなお願いをした事があるのではと感じます。
スランプ値は許容差として±2.5cmあるので、実質は
スランプ値が15.5~20.5までが許容値だからです。
確かに
スランプ値を上げるとワーカビリティーが上がりますが、
良いことだけではありません。当然ながらコンクリート内の
余剰水などが増えることで骨材が分離したり、ブリージング
が生じたりするので品質的には悪くなってしまいます。
結局は
コンクリートは施工性と品質、更にはコストがいつも
天秤にかけられている工種なのですからね。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.361
6.2.4 ワーカビリティー及びスランプ
ワーカビリティーとスランプの関連等について次に示す。
(ア) ワーカビリティーは、打込み場所並びに打込み方法及び締固め方法に応じて、型枠内並びに鉄筋及び鉄骨周囲に密実に打ち込むことができ、かつ、粗骨材の分離が少ないものとする。また、スランプの所要値は、特記がなければ、基礎、基礎梁、土間スラブでは15cm又は18cm、柱・梁・スラブ・壁では18cmとする。
(イ) ワーカビリティーは、運搬、打込み、締固め及び仕上げのフレッシュコンクリートの移動・変形を伴う作業の容易さと、それらの作業によってもコンクリートの均一性が失われないような総合的な性質であり、フレッシュコンクリートの流動性の程度を表すスランプとは別の概念である。
(ウ) 作業の容易さからいえば、スランプが大きく流動性が高いほうがワーカビリティーが良いといえるが、スランプが過大になると粗骨材が分離しやすくなるとともにブリーデイング量が大きくなり、コンクリートの均一性が失われる。そこで、単位セメント量や細骨材を大きくするとフレッシュコンクリー卜の粘性が大きくなり、粗骨材の分離は生じにくくなる。
(エ) スランプを大きくし、かつ、単位セメン卜量や細骨材率を大きくすれば、見かけ上はワーカビリティーの良いコンクリートが得られる。しかし、単位水量や単位セメント量が過大になると乾燥収縮率が大きくなってひび割れが生じやすくなるとともにセメントペーストやモルタル分の多いコンクリートとなって、打上りコンクリートの表面の品質が悪くなる。
(オ) このため、作業の容易さだけでワーカビリティーを評価するのではなく、ブリーデイングや骨材の分離ができるだけ少なくなるようにするという条件も考慮しなければならない。
(カ) スランプは、打込み時のフレッシュコンクリートに要求される重要な品質項目の一つであるが、ここでいう所定スランプとは、荷卸し地点でのスランプである。所定スランプ18cmというのは、許容差を含めて考えればよく、その値はJIS A 5308 (レディーミクストコンクリート)の規定によれば±2.5cmである。
つまり
コンクリートのワーカビリティーとスランプは無関係なのか?
についての疑問については
ワーカビリティーは、運搬、打込み、締固め及び仕上げの
フレッシュコンクリートの移動・変形を伴う作業の容易さと、
それらの作業によってもコンクリートの均一性が失われないような
総合的な性質であり、フレッシュコンクリートの流動性の
程度を表すスランプとは別の概念である。
と建築工事監理指針に記載されているように概念的には別であるが
施工性を良くするためには、スランプの値を大きくする事で
対応することが多くなるのだが、安易にスランプ値を大きくすると
コンクリートの品質面にとっては必ずしも良いことではないです。
この「品質」と「作業性」のバランスを作業員さんと共有して
納得してもらう事もあなたの大切な仕事の1つであると
私は考えていますよ。あなたはこちらの記事の様にならないでね!!
↓ ↓ ↓
この記事へのコメントはありません。