工事監理者さんが超音波探傷試験に加えて引張試験をしたい理由とは?

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ガス圧接や溶接継手の検査方法は大きく分けて2種類あります。
超音波探傷試験と引張試験です。

最近では、非破壊検査でありその場で合否が判定できるため
超音波探傷試験を採用する場合が多いように感じています。

 

しかし

「超音波探傷試験だけじゃ不安だからさ、1回引張試験しない?」

という工事監理者さんも一定数いるとも感じています。

 

その場合、あなたは

「面倒くさいことを言う監理者だな。別に超音波探傷試験でいいじゃん」

と思うのか

「確かに1度くらいならやっても良いか」

と思うかどちらでしょうか?私の過去の経験上から行くと

「1度は自主的にでも引張試験で確認すべき」

と強くオススメしておきます。

 

なぜなら

超音波探傷試験は「接合部の欠陥を発見する検査」であって
「母材の強度がデテイルことを証明する検査」ではないからです。

 

しかし

当然ながら、超音波探傷試験で良いとされているのは、実証実験などで
適正な方法によって施工部について溶接の欠陥が無ければ「問題ない」
という事を実証されているから認められているので、通常は超音波探傷試験
のみでも問題ないと言えます。

 

だけど

1度は「母材以上の強度が出ている」という証明証を手元に持って

「今の施工方法で接合部の欠陥が無ければ強度は出ている」

という安心感を持って、今後進めていく事は工事監理者さんにとっても
あなたにとっても非常に有効なのではと感じています。

 

ついでに

なぜ私が今回の記事を書こうと思ったのかについてですが、
「たった1回の引張試験」を現場で行っていたために、竣工後に起こった
ここでは書けませんが、ある「疑念」に対抗することが
出来たからです。

人間いつ何時どんなトラブルに見舞われるか本当に分かりません。
そのための備えとして1回くらいは引張試験を行ってみても
良いのではないでしょうか?

 

最後に

超音波探傷試験と引張試験の検査の違いについて
建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]
の該当部分を確認して下さい。

 

P.319

(イ) 超音波探傷試験又は引張試験

ガス圧接部の超音波探傷試験又は引張試験について、「標仕」では、特記がない場合には、超音波探傷試験によるとしている。ただし、特定行政庁によっては、引張試験を行う基準を運用していることがあるので、事前に確認しておく必要がある。

① 超音波探傷試験は、次のような特徴がある。

1) 非破壊試験であり、検査のための切取りによる再圧接がない。
2) 試験の抜取り箇所教を増減することができ、必要に応じて全数検査も可能である。
3) 試験従事者の技量に信頼性が依存する。
4) 工事現場において試験ができ、すぐ結果が分かる。

② 引張試験は、次のような特徴がある。

1) 切取りによる破壊試験であり、抜き取った継手の品質を直接的に確認できる。
2) 切取りによる全数検査は、不可能である。
3) 切取りによる再圧接箇所数が増える。
4) 試験結果を得るまでに時間がかかることが多い。

 

(a) 超菅波採傷試験

① 超音波探傷試験の試験箇所数

「標仕」では、超音波探傷試験における抜取試験のロットの大きさを1組の作業班が1日に施工した継手箇所としている。1ロットの継手数は、鉄筋の径や継手位置等によって異なり、D22の場合 100~200箇所、D32の場合80~150箇所、D38の場合50~100箇所程度と想定される。また、試験の箇所数は1 ロットに対して30箇所であり、ロットから無作為に抜き取る。

② 超音波探傷試験の方法と合否判定基準

超音波探傷試験は、鉄筋軸線に対して20度傾いた超音波ビームを圧接面に当てて、圧接面に欠陥がある場合に検知される反射波の強さを測定する試験である。

超音波探傷試験の試験方法及び判定基準は、JIS Z 3062(鉄筋コンクリート用異形棒鋼ガス圧接部の超音波探傷試験方法及び判定基準)によるが、この規格の合否判定基準は、図5.4.8に示す欠陥からの反射波の強さと圧接部の引張強さの相関について調べた実験結果に基づいて定められている。図5.4.8において、横軸は鉄筋母材を透過させたときの透過波の強さ (基準レベルという)。に対する反射波の強さの比(エコー高さ)を示し、縦軸には同じ継手を引張試験して得られた圧接部の引張強さを鉄筋母材のJIS規格引張強さの下限値で除した値を示している。この図の関係より、基準レベルに対して-24dB (反射波の強さは基準レベルの約1/250)以上のエコー高さを示す圧接部を不合絡とし、-24dB未満を合絡としている。

 

図5.4.8 エコー高さと引張強さの関係

 

P.326

(b) 引張試験
① 引張試験の試験箇所数

引張試験の場合、超音波探傷試験による抜取試験の場合と同じく1検査ロットの大きさは、1作業班が1 日に施工した箇所数としている。
また、試験片の採取数は1ロットに対して3本としている。作業班ごとの外観試験に合絡したもののうち最も外観の悪いものについて行い、その採取箇所は監督職貝が指定することが望ましい。
なお、引張試験片の採取数を1ロットに対して3本としていることは、いわゆる良品を施工するプロセスに発生するエラーの頻度の多少を検査する統計的な品質管理という位置付けではなく、そもそも適切な施工が行われたか否かを試験によって確かめるというものと考えることができる。
試験片を採取した箇所は、同種の鉄筋を再圧接により継ぎ足して修正する。
ただし、鉄筋がD25以下の場合にはコンクリート打込み等に問題がなければ鉄筋の納まりを考慮し、設計担当者と協議したうえで、重ね継手として修正させてもよい。

 

つまり

工事監理者さんが超音波探傷試験に加えて引張試験をしたい理由とは
超音波探傷試験は、接合面に対する欠陥の有無をチェックするだけで
実際に「母材で破断される強度が出ているか?」について試験できないから。

 

だから

毎回とは私も言いませんが、最初の1回だけでも引張試験を行うことで
工事監理者さんも、あなた自身も安心するので騙されたと思って
実施してみて下さいね。

 

ちなみに

「設計図には引張試験をやれ!とは書いてありませんから!!」

と答えるのは、今回の内容では別として一般的にオススメできません。
「何で!?」と感じたあなたはこちらの記事をオススメしますよ。

↓ ↓ ↓

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