「鉄骨の柱を平らな所に置いておくだけだと何かの拍子に倒れます」
というと
「何言ってんだ!当たり前の事をいちいち言うな!」
と起こられてしまいそうですが、確かに当たり前のことで、
地震などで水平に揺れたら「左右にズレ」ますし、上部でのバランスが
崩れたら転倒してしまうので、「引き抜きの力」が働きますよね。
なので
水平変位と引抜の力に耐えられるように、一般的に鉄骨の足元は、
ペースプレートを設置して、アンカーボルトで固定します。
そこで
少し前置きが長くなってしまいましたが、今回のタイトルにある
「アンカーボルトの種類(建て方用と構造用)」についてですが、
この違いは、アンカーボルトにかかる荷重を「いつまで耐えるか?」
が簡単に言うと答えなのです。
まず
建て方用アンカーですが、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造などで
躯体工事が完了してしまったら、コンクリートで周りが固まってしまい
鉄骨だけ(特にアンカーボルト部分)に耐力を期待しないでもよい。
という状態なので、「躯体工事完了時」まで、鉄骨が倒れないように
保持出来ればよいという感じです。
かなり雑な説明で、どこからか批判のコメントが来るかもしれませんが
建て方用アンカーボルトは、そこそこ建っていればよいので、
極端な話ケミカルアンカーでもよい。
というレベル感です。
次に
構造用アンカーですが、こちらは建物が完成した後も、地震や他の外力
に対して、ずーっと耐え続けなければいけません。
なので
ケミカルアンカーの様な後打ちアンカーではNGで、所定の径・長さ・位置
がしっかりと精度を持って保たれていなければいけません。
なぜなら
1995年に発生した、阪神淡路大震災で、露出柱脚が破断して
建物が倒壊などに至ったケースも多く、見直しが実施される位、
建物全体の倒壊に影響を及ぼす程、重要なファクターだからです。
結局
建物も人も「土台がしっかりとしていない」と、外力に対して
想像以上に弱くなってしまいますからね。
最後に
「建築工事監理指針(令和7年版上巻)」
の該当部分を確認して下さい。
P.622
7.10.3 アンカーボルトの設置等
(1) アンカーボルト
(ア) 適用範囲
アンカーボルトによって鉄骨骨組 (鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄骨も含む)を鉄筋コンクリート造部分 (RC造)に接合し、固定することを定着という。
一般的には、鉄骨柱とRC造の基礎との接合部すなわち柱脚を指すことが多い。
ここでは、定着の代表的な部位として柱脚を取り扱うが、図7.10.1に 示すようなほかの定着部位についても準用できる。
図 7.10.1 定着部位の例
(イ) アンカーボルトの役割
柱脚の形式は、骨組の規模、柱からの応力伝達の条件により多岐にわたるが、基本的には、イ:露出形式 ロ:根巻き形式 ハ:埋込み形式 の3つに分けることができる。その例を図7.10.2に 示す。
一方、アンカーボルトに要求される役割は、次の2種に分けられる。
① 建方用アンカーボルト
躯体工事完了後は構造耐力を負担しないアンカーボルトで、主に建方の手
段として用いる。
② 構造用アンカーボルト
躯体工事完了後も構造耐力を負担するアンカーボルトで、引張力・せん断
力及びこれらの組合せ力を負担する。
アンカーボルトの施工に当たっては、上の役割について留意する必要があ
る。(ウ) アンカーボルトの形状・寸法及び品質
(a) アンカーボルトの形状・寸法及び品質は7.2.4による。
(b) アンカーボルトの形状の一例を図7.10.3に 示す。
図 7.10.2 柱脚の形式
図 7.10.3 アンカーボルトの形状の例
つまり
アンカーボルトには、同じ材料を使うにしても、構造的な観点より
2種類の考え方があるので間違えないようにしないといけないです。
構造用アンカーボルト:
構造的な負担を行うアンカーボルト。
あと施工アンカーなどは認められていない。
建て方用アンカーボルト:
SRC造などで鉄骨の自立に必要なアンカーボルトで、躯体工事完了後は
構造的な応力を負担しない。
この2つを混同してしまうと、アンカーセットからやり直し
という事態に陥る可能性があるから最注意ポイントです。
ちなみに
現場ではやりたくない事ですが、あなたは間違えて指示してしまった
ことを、「やり直す勇気」ってありますか?
答えに詰まったあなたはこちらの記事を読んでみて下さいね。
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