前回はスラブの厚さについてお伝えしました。
そこで、今回は壁の厚さについてお伝えしていきましょう。
まず
スラブの厚さについて私が120mmだと「気持ち悪い」
と感じるとお伝えしましたが、実は根拠があります。
別に、厚さが120mmでも、土間スラブのようにシングル配筋
で納めるという方法もあるかも知れませんが、構造スラブの場合は
端部と中央部では応力の掛かり方が異なります。
端部ではスラブの上部に引張力が、中央部ではスラブの下部へ引張力が
掛かるため、配筋方法もシングル配筋ではなくダブル配筋にして
応力の掛かり方に応じて適切に配筋を決定する必要があるからです。
しかし
壁については、建物の応力を負担する「耐力壁」と、
応力を負担しない「非耐力壁(雑壁)」があります。
応力を負担しないのであればシングル配筋でも、私は気持ち悪さを感じません。
たとえ応力を負担したとしてもスラブのように部位によって
応力の掛かり方が決まっていて、事前に検討する必要はありません。
耐力壁の場合は右から力が掛かるのか?左側からなのか?は
現実に地震などが起きないと分かりませんからね。
更に、耐力壁の自重は基本的には「面内方向」に掛かるので
シングル配筋だろうがダブル配筋だろうが大して影響がないはずです。
だから
大抵の場合は、壁リストには「W12」、「W15」、「W18」
という風に並んでいるのではないでしょうか?
そこで
それぞれの配筋をみると「W12はシングル配筋」、
「W15はチドリ配筋」、「W18以上はダブル配筋」
となっていることが多いと感じます。
しかし
私は長らく先程の配筋構成に疑問を感じていませんでした。
「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の該当部分を確認する時までね。
(2) 壁筋は,ひび割れ発生後のひび割れ幅の拡大,内部への進展を防止する.このためには付着性能のよい異形鉄筋を使用し, 径はなるべく細く,間隔を密に配筋するのが有効である.
壁の厚さは,耐力壁・土圧壁など構造計算で定まるほか,スラブと同様にかぷり厚さ・使用鉄筋径・粗骨材最大寸法・仕上げの有無・設備配管の壁内配管の外径・開口補強の方法な
どの施工条件によって定まる.施工条件より定まる耐力壁の最小の壁厚は,土に接しない部分で,屋内および耐久性上有効な仕上げのある屋外の場合,以下の(イ)~(二)の条件の下で,解説表3.11のようになる,
(イ) 仕上げあり
(ロ) かぷり厚さ40 mm
(ハ) 粗骨材最大寸法25 mm
(ニ) 開口部補強飭なし解説表3.11 で推奨する壁厚の場合は,設備配管の外径30.5mm(PF管の呼び径22)までは埋込み可能となるが,管が交差して壁に埋め込まれるとかぷり厚さが局部的に減少する
ので注意する.一般に耐力壁の場合は単配筋で120mm以上,複配筋で160mm以上の壁厚とするのがよい.なお,開口部補強に斜め筋を用いる場合は, これに相当する壁厚を,コンクリートの充てん性を考慮して定める.
■■解説表 3.11 耐力壁の最小厚さ (単位:mm)
配筋 使用鉄筋 かぶり厚さ 鉄筋太さ 鉄筋のあき 壁厚合計 → 推奨最小値 単筋 D10 40 × 2 = 80 11 × 2 = 22 - 102 → 120 D13 D10,D13交互
80 14 × 2 = 28 - 108 → 120 複筋 D10 80 11 × 4 = 44 25 × 1.25* = 31 155 → 160 D13 D10,D13交互
80 14 × 4 = 56 31 167 → 170 D16 D13,D16交互
80 18 × 4 = 72 31 183 → 190 [注]
(1) *粗骨材の最大寸法による規定は最大寸法の1.25倍かつ25mm以上
(2) 本表は,土に接しない都分で,屋内および耐久性上有効な仕上げのある屋外の耐力壁に用いる.
(3) 本表は,(2)の条件で計画供用期間の級が短期・標準・長期・超長期のいずれの場合にも使用で きる.
つまり
非耐力壁の代表格であるW15がチドリ配筋である理由とは、
ダブル配筋(複筋)の場合の壁厚の推奨最小値が160mmなので
壁厚を150mmにするためには縦・または横筋が同じ位置にあっては
鉄筋のあき寸法を確保出来ないからです。
そこで
基本的には複筋だけど、鉄筋位置をズラしたチドリ配筋を採用している
場合が多いのです。
更に
耐力壁の場合は、それぞれの壁が負担する応力によって壁厚が決定します。
耐力壁の配筋時に気をつけなければいけないのは「鉄筋の有効間隔」です。
理由の1つはこちらで確認してくださいね。
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