型枠大工さんの仕事は「バカでは出来ない」と私は考えています。
別に他の工種の人をバカにしている訳では全くなく、それだけ
「緻密な計算」に基づいて計画を行わないといけない工種だからです。
そこで
今回と次回で型枠大工さんに必要な技量をお伝えします。
今回は基本的な4項目を、次回は本質的な1項目という内容にします。
まずは
「隙間なく組み立てる」です。
型枠に5mmの隙間があれば、その隙間から「ノロ」が出ていきます。
もっと隙間が出来れば圧力の掛かったコンクリートが漏れ出してしまい、
現場は噴き出したコンクリートまみれになる危険性があります。
でも
あなたにとって当たり前かも知れませんが、簡単そうで意外と難しいです。
そこで
基本的な事からお伝えすると、まずは隙間なく組み立てるには
「材料の加工寸法が正確である必要」があります。
具体的には
- 1つ1つの材料の組合せである型枠のせき板(コンパネなど)を正確に計算して拾い出す必要があります。
- 上記で拾い出した寸法の通りに直角、平行の精度を確保しながら加工する必要があります。
この2項目が出来て初めて隙間なく組み立てるベースが出来ます。
しかし
それだけでは「隙間なく」現場で組み立てる事は出来ません。
なぜなら
型枠を建て始めるコンクリートなどには施工誤差が含まれているからです。
具体的には
コンクリートの床の精度はどこを測っても±0mmという訳ではありません。
10mもスパンがあれば10mm程度の誤差がある可能性があります。
すると
せっかく1mmの狂いもなく材料を加工していても、
隙間なく組み立てる事が出来ないからです。
だから
躯体の誤差が予想される場合は「調整しろ」を作ります。
スラブの上に設置する「敷き桟」と呼ばれるような
桟木を敷いてパッキンでレベルを見ながら高さを調整している作業が
型枠の隙間をふさぐ作業の大切な1つの作業なのです。
次に
「精度よく組み立てる」です。
この「精度」という言葉は2つの意味があります。
「コンクリート打設前の精度」と「コンクリート打設後の精度」です。
実は
型枠工事の難しさは、コンクリート打設前に±0mmで型枠を
組み立てたとしてもコンクリート打設後に精度が出ているか?
というと一概に言えないからです。
なぜなら
コンクリートを打設する上では相当な荷重が型枠に掛かっているからです。
コンクリートの自重は1m3あたりに約2.4tも掛かりますし、
コンクリートポンプ車の圧送する衝撃もなかなかもものです。
だからと言って、打設前の精度が悪ければ打設後の精度はもっと悪いので、
打設前の精度についても下げ振りなどで鉛直をこまめに確認する必要が
あるのです。
そして
コンクリートの実際の打設時には、合番として立ち会って、
打設が完了した後の型枠について水平・鉛直をサポートなどで
調整を行います。
また
スラブなどの水平レベルについては、打設が完了した後に「持ち上げる」
という作業は困難なので、あらかじめ高めにセットしておいて、
レベルを見ながら下げて調整している事が多いですね。
3つ目は
「打設の荷重に耐えるように組み立てる」です。
こちらに関しては前回の型枠の構造計算の回でお伝えしたので
今回は詳しくお伝えはしませんが興味があればこちらをご確認下さい。
4つ目は
「仕上げ面によって材料を適切に使い分ける」です。
例えば
全ての箇所でコンクリート打ち放し仕上げの必要がある
土木の橋の橋脚のような工事では難しく考える必要はないですが、
建築工事の型枠となると、外壁面はタイル張りの所や吹付仕上げの
場所があったり、
内壁面では、左官で補修してクロス張りをする所があれば、
硬質ウレタンを吹き付けて全く表面が見えなくなる所もあります。
そして
コンパネについても「塗装合板」と「普通合板」では単価が違いますし、
「新品」でないといけない所か?転用材を使用しても良い所か?によって
材料を使い分ける必要があるのです。
当然ながら「出来るだけ材料単価と手間をかけず」に仕事を出きるか?
が型枠大工さんの技量につながってきますので、躯体の事だけでなく
仕上げについても理解しながら計画するのが型枠大工さんの使命なのです。
だから
私は型枠大工さんは「バカでは出来ない」と考えているのです。
では
最後の1項目は予定通り次回にしますね。
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