前回は「何故かぶり厚さの確保が必要か」についてお伝えした。
その中で、かぶり厚さと鉄筋の酸化とコンクリートの中性化の内容を
ふまえて今回は、建物の高寿命化とかぶりの関係についてお伝えする。
まずは
「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の該当部分を確認して欲しい。
(4) 表3.1, 解説表3.1 にある短期・標準・長期,超長期(構造体の計画供用期間)は,
JASS 5 (2009 年版)で次のように規定されている.詳しくはJASS 5 (2009 年版)「2.4耐久性」を参照のこと.i)短期供用級(計画供用期間としておよそ30 年)
ii)標準供用級(計画供用期間としておよそ65 年)
iii) 長期供用級(計画供用期間としておよそ100 年)
iv)超長期供用級(計画供用期間としておよそ200 年)解説表3.1 最小かぷり厚さ
部材の種類 短期 標準・長期 超長期 屋内・屋外 屋内 屋外(2) 屋内 屋外(2) 構造部材 柱・梁・耐力壁 30 30 40 30 40 床スラブ・屋根スラブ 20 20 30 30 40 非構造部材 構造部材と同等の耐久性を要求する部材を行う部材(1) 20 20 30 30 40 計画供用期間中に維持保全 20 20 30 (20) (30) 直接土に接する柱・梁・壁・床および布基礎の立上り部分 40 基礎 60 (1) 計画供用期間の級が超長期で計画供用期間中に維持保全を行う部材では, 維持保金の周期に応じて定める.
(2) 計画供用期間の級が標準, 長期および超長期で, 耐久性上有効な仕上げを施す場合は, 屋外側では, 最小かぷり厚さを10mm 減じることができる,
「参考」建築基準法施行令 第79条 (鉄筋のかぶり厚さ)
部位 かぶり厚さ 耐力壁以外の壁, 床 20以上 耐力壁, 柱, 梁 30以上 直接土に接する壁, 柱, 床, 梁, 布基礎の立上り 40以上 基礎( 布基礎の立上り郁分を除く) 60以上 「注」基礎にあっては捨コンクリートの部分を除いて60以上とすること
ここで
あなたに注目してほしいのは計画供用期間によってかぶり厚さが変わること。
計画供用期間とは、建物の寿命をどのようなスパンで考えるか?ということで
短期30年、標準で65年、長期100年、超長期200年としている。
しかし
今まで「短期」という設定は今まで私は見たことは無いので、
基本は「標準」からが計画供用期間であると感じる。
だって、設計者がお客さんに対して
「この建物は標準以下の短期30年持てば良いでしょう」
と提案できる人は中々少ないと思われるので
「とりあえず標準で…」
となるからだと感じるよ。
そして
あくまでも私見だけれども、公共性の高い重要な建物以外では
長期や超長期、つまり100年も200年も持つ建物は必要ないのでは?
とも正直感じている。
なぜなら
100年後の世界なんて想像もできないし、建物が仮に残っていたとしても
現状の立地で、現状の用途で100年後も良いのか?という疑問を持つから。
それなら、60年位のスパンで、その時代に合う用途や規模を検討すれば
100年持つ建物はオーバースペックかなと私は感じてしまうのだ。
さて
ちょっと脱線をしてしまったが、建物の高寿命化として必要なのは
コンクリートが性状を変えないまま保っていると言うことと同様に、
鉄筋が性状を変えずに保っているということが非常に重要なのだ。
だから
建物の計画供用期間が長期や超長期になればなるほどかぶり厚さが
増える部分が出てきくるのは、かぶり厚さによって鉄筋の劣化を防止する
という効果があるから。
「かぶり1cm 20年」
と言われることもあるくらい、かぶり厚さが建物の寿命に関わる重要な
項目であることは間違いなく、同時に有り過ぎが良いというわけでもない。
ただ
逆説的に言ってしまえば、あなたが現場管理をする上で
「かぶり厚さが1cm足らないと建物の寿命を20年縮める」
ということにつながってしまうのだ。
実際に
現場で施工管理をしていく上で「かぶり厚さが足らない」という場面には
あなたは山ほど出会っていくだろうが、そこで頭の片隅において欲しいのが
「建物を生かすも殺すもあなたの判断次第」
ということであり、コンクリートを打設してしまえば分からなくなるから良いか。
と感じて施工してしまう気持ちになるかも知れないけど、数年後に建物が
かぶり不足で爆裂を起こした時に、「施工不良」として責任を問われることに
比べれば、打設前に多少時間と手間がかかっても修正することが大事だよね。
確かに
あなたにとって状況に流されずに意見を言うことは大変かもしれない。
そこで、自分の意見を言うためには「何もしなかった時の最悪の結末」
をイメージできているか?が大きく関係してくるからね。
私もあなたに最悪の結末の責任を取るような立場にはなって欲しくないからね。
それでは
次回は、部位別のかぶり厚さについてお伝えする予定だよ。
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