鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物など構造の主要な部材に
鉄骨を使用する場合は、構造の特記仕様書に使用する鉄骨工場の
「グレード」が記載している場合が多いです。
そして
鉄骨工場のグレードというのは上からS、H、M、R、Jと五段階あり、
国土交通省が認定しているのです。
ここで
構造設計者としては
「この建物の難易度としては○○グレードでないと
所定の品質を確保する事が難しいんじゃ無いの?」
という意味が込められていると容易に推測されますね。
しかし
実際に施工する側として「その通りだ」と感じる場合もあれば、
「もう1ランク下でも出来るぞ!」と感じる場合もあります。
ここで
「でも、鉄骨工場のグレードが指定されているなら従えば良いのでは?」
とあなたは感じたかもしれませんが、時として従えない場合があります。
具体的には
鉄骨工場のグレードが上がると、総じて「鉄骨単価が上がる」からです。
1つ下のグレードの鉄骨工場で加工できるなら不必要な加工費を
払う必要性が全く無いからです。
なぜなら
鉄骨工場のグレードの認定基準は以下の項目で決まります。
(ア) 工事経歴
(イ) 鉄骨製作工場の規模、契約電力及び機械設備
(ウ) 生産能力 (月産能力及び加工能力の余裕)
(エ) 他工事の製品の出来ばえ
(オ) 鉄骨製作業者の資格基準
(カ) 鉄骨製作管理技術者、溶接管理技術者、非破壊検査技術者、溶接技能者の資格・人数
(キ) 品質管理システム等
すると
上のグレードを目指せば当然ながら設備投資や人材の確保、
品質管理システムの構築に費用が掛かるので当然ながらコストに
反映されてグレードの高い鉄骨工場の方が単価が高くなるからです。
また
鉄骨工場が更に上のグレードを目指して日々努力しているか?
と言われるとそうでもない気がしています。
なぜなら
その地方で「Hグレード」を要求される建物の需要が無ければ、
別に「Mグレード」でも経営上全く支障が無いからです。
逆に
「Hグレード」を目指して設備投資する事が「過剰」な経営戦略となり、
経営の足かせになる事態も考えられるので、鉄骨工場がどのグレードを
目指しているか?というのはそれぞれの工場での事情があると私は感じていますよ。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.514
7.1.3 鉄骨製作工場
(1) 鉄骨製作工場は、設計図書に特記された加工能力等及び施工管理技術者の適用に適合するものとする。これらの特記がない場合は、受注者等が選定した適切な鉄骨製作工場について、次の事項を記載した文書等から加工能力等を確認すればよい。
(ア) 工事経歴
(イ) 鉄骨製作工場の規模、契約電力及び機械設備
(ウ) 生産能力 (月産能力及び加工能力の余裕)
(エ) 他工事の製品の出来ばえ
(オ) 鉄骨製作業者の資格基準
(カ) 鉄骨製作管理技術者、溶接管理技術者、非破壊検査技術者、溶接技能者の資格・人数
(キ) 品質管理システム等
(ク) その他(2) 特記される加工能力等は、国土交通大臣の認定によるグレードで指定されることが多い。認定は指定性能評価機関が工場の品質管理体制、規格類の整備状況等を評価し、その結果に基づいて行われる。
つまり
鉄骨工場の格付けに使用されているS、H、Mなどのグレードは、
国土交通省の指定性能評価機関が鉄骨工場の品質管理体制、規格類の
整備状況等を評価し、その結果に基づいて行われている格付けです。
しかし
どこの鉄骨工場もSグレードを目指して頑張っているかと言うと
答えは「NO」で、その地域の需要や取引相手や、雇用人数および
品質管理体制の確立の難易度により、その工場としてベストな選択を
それぞれ行っているのが実情です。
では
建築現場の主要資材の工場として生コンクリートを製造する工場では
どの様になっているのでしょうか?気になるあなたはこちらの記事をどうぞ。
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