「中のスラブは別に良いけど、バルコニーの支保工は出来るだけ置きたいね」
と言われる工事監理者さんは多いです。
実際には、工期の関係上なかなか要望が叶うことは無いのですが…。
しかし
工事監理者さんの言いたい事は良く分かります。
なぜなら
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」にも
片持梁やひさしは静定構造であり、ひび割れが発生すると大きなたわみにつながるおそれがあるので、支柱の存置期間を必要に応じて延長するのがよい。
と記載されているからです。
ただ、「するのがよい」なので願望的になっていますけどね。
ちなみに
文中に記載されていた「静定構造」について補足をしておきます。
ウィキペディアには以下のように書かれています。
静定構造(せいていこうぞう、英: statically determinate structure)とは力の釣り合いから応力分布(モーメント図、剪断図)が決まる構造のことである。安定を保ために、必要最低限の拘束数しか受けない構造物である。
つまり
分かりやすく言うと、簡単に計算が出来る「単純な構造」という事で、
何かのバランスが崩れると崩壊してしまうような構造です。
逆に
一般的な建物などは「不静定構造」と呼ばれ、色んな要素があるので、
どれかの要素が破綻しても直ぐに「崩壊」という事にはなりません。
ちなみに
阪神大震災で高層道路が倒れたのは、橋脚が「静定構造」であったので、
想定以上の外力に対して耐えきれなかったのが原因です。
だから
バルコニーなどの部分については、他の部分より慎重にしたいし、
型枠支保工の存置期間を1日でも伸ばしたいのです。
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.447
(3) 片持梁やひさしは静定構造であり、ひび割れが発生すると大きなたわみにつながるおそれがあるので、支柱の存置期間を必要に応じて延長するのがよい。また、「標仕」では、長大スパンの梁、大型スラブ等の型枠を支持する支柱及び施工荷重が大きくコンクリートに支障が生じるおそれがある場合の支柱等は、必要に応じて存置期間を延長するとされている。
つまり
庇の様な片持ちスラブの支保工を1日でも長く置きたい心理とは、
片持ちスラブが「静定構造」と呼ばれる比較的単純な構造形式のため
何かの外力などでひび割れが発生すると大きなたわみが生じるという
危険性が高いからです。
だから
4辺を梁で囲われたスラブに比べて、1日でも長く強度が発現するまで
支保工を置いておきたいとう願望が発生するのです。
ちなみに
「静定構造」については、簡単に計算が出来ます。
部材と荷重を入力すれば簡単に計算できるシステムを
作成していますので、是非試してみて下さいね。
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