今回で4回目の「かぶり厚さの基本の「キ」」は最小かぶりと設計かぶり
についてお伝えするのだけど、以前の記事を読みたいあなたはこちら。
さて
本題に入っていくけど、今回は結論から先にお伝えするよ。
まず
「最小かぶり」とは建築基準法施行令 第79条に定められた
法律上守るべき必要最低限のかぶり厚さ。
「設計かぶり」とは最小かぶりを確保するために施工誤差などを
考慮して一般的に10mm余裕をみたかぶり厚さ。
つまり
「最小かぶり」は絶対守らないといけないかぶり厚さに対して、
「設計かぶり」は施工時点で最小かぶりを確保するための現実案。
だけど
なぜ設計かぶりの割増しは10mmなのだろう?
実は
5mmでも良いかも知れないし、逆に20mm程度必要かもしれない。
実際に現場で鉄筋を組み立てる場面を見たことある人なら想像つく
かも知れないけど、10mmの誤差なんて組立中には頻繁に発生する。
柱筋も上の方は型枠とスペーサーなどで固めないと微妙に倒れている
という場面はよくあるし、梁筋にしても組立時では曲がっていたりもする。
実際に、10mmずつの施工誤差以内に納めようとすると、
それなりにシビアに組み立てないといけないのだ。
けれど
こちらに設計かぶりが10mm割増しである理由をこちらの書籍で
説明しているので確認しておこうね。
引用:鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]
(2) 表3.1 で規定している各部位の設計かぶり厚さは,施工誤差の割増し10 mm を標準として見込むことによって. JASS 5 (2009 年版)の表3.3 で定められた最小かぶり厚さを下回る危険性を少なくするように, 設計時点で配慮したものである.つまり配筋後,コンクリートが打ち込まれ,硬化した状態でも施行令で定めるかぷり厚さが確保されるように,多少の安全性を見込んで定められたものである.
実際の施工において,施工誤差には次のようなものがある.(i) 鉄筋自体の曲がり
(ii) 帯筋・あばら筋の加工を5mm単位に丸めて行う慣例
(iii) 鉄筋の加工・組立て誤差
(iv) 型枠の加工・組立て誤差
(v) バーサポート・スペーサーの製品誤差
(vi) コンクリート打込みによる変形・型枠の移動
(vii) コンクリート打込みによる鉄筋 の移動
だから
最小かぶりに10mm両側に足すと全体で20mmとなるので、
感覚的には製品誤差の積み重ねが5~10mmで、
施工誤差が10~15mmで合わせて20mmという所が実感かな。
それでも、気持ちは誤差0mmで施工をしないと誤差の範囲内には
収まらないと感じるので十分注意して現場を管理してね。
くれぐれも「法違反」をしないようにね。
つまり
今回のシリーズでお伝えしたかぶり厚さに関することをおさらいすると、
- 鉄筋のかぶり厚さとは、建物の構造において引張力を負担する鉄筋が空気や水分などと接触して「錆」が発生しないよう為に講じるものである。
- 建物の高寿命化と鉄筋のかぶり厚さとは因果関係があり、計画供用期間が長期や超長期の方が短期や標準よりかぶり厚さが大きい。
- 同じ計画供用期間でも構造体と非構造体では構造体の方がかぶり厚さが大きい。
- 同じ部位でも屋外で使用する箇所のほうが屋内の箇所よりかぶり厚さが大きくなる。
- 同じ部位でも土に接する箇所のほうが、その他の部分よりかぶり厚さが大きくなる。
- 耐久性上有効な仕上げがあれば、かぶり厚さを減じることが出来る。
- 「最小かぶり」とは建築基準法施行令で定められている最低基準であり、「設計かぶり」とは現場における施工誤差や製品誤差を考慮した上で最小かぶりが確保できるように設定された値であり、一般的に最小かぶり+10mmで有ることが多い。
これらの内容をおさえておけば、基本の「キ」は大丈夫かなと感じるよ。
最終的には、現場では施工誤差も含めた「設計かぶり」が基本となるので
間違えずに覚えておこうね。
あっ
少し今回とは話の内容が変わるけど「誤差」といえば、
過去にこんな記事も書いたので合わせて読んでみてね。
↓ ↓ ↓
この記事へのコメントはありません。