「溶接金網の枚数が足りないよ~!」
ある日、鉄筋屋さんからあなたの所へ電話が掛かって来る。
「おかしいな~。単純な計算だから間違えるはず無いのに??」
確か…。
縦10.8mx横11.7mのスパンに縦1mx横2mの溶接金網を
敷き込むから縦11枚分、横6枚分で66枚で間違いないんだけど…。
一体どこを間違えようがあるんだろう?現場に納入された枚数が
違っているのかもしれないな~。
しかし
この計算だと実は間違っているのです。
勘の良いあなたであれば気づいているかもしれません。
もしかしたら、あなたも実際に同じ失敗をしているかもね。
実は
先程の計算には、溶接金網の「重ね代」が計算されていなかったのです。
仮に、溶接金網を「突き付け」で配置するのであれば問題なかったでしょう。
しかし
溶接金網には「横筋間隔に50mmを加えた長さ以上,かつ150mm以上とする」
という継手のルールがあるのです。
つまり、メッシュ間隔が100mmの溶接金網では重ね合わせが生じる毎に
「150mmずつロス」していく計算になるので最終的には寸足らずになるのです。
分かれば誕生ですよね。しかし、この「単純さ」がついつい失敗してしまう
原因になることもまた真実なのです。
最後に
「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の該当部分を確認して下さい。
6.4 溶接金網の定着と継手
a.溶接金網の定着は,図6.2による.
図6.2 溶接金網の定着
b,溶接金網の継手は重ね継手とし,図6.3による.
(a)応力伝達継手
(b)ひび割れ幅制御用溶接金網の掛合図6.3 溶接金網の継手
a.溶接金網の定着の長さLは,支持部材の内側表面から溶接金網の最外端の横筋までの距離とし,その値は横筋間隔に50mmを加えた長さ以上,かつ150mm以上とする〔図6.2〕.
この長さを定着することにより,金網の素線の規格引張強さは十分に定着できることが実験で確かめられている.ただし溶接金網は,JIS規格〔JIS G 3551(溶接金網及び鉄筋格子)〕で全溶接点の4%以下のはく離が許容されているので,図6.2による場合は,定着部に溶接点のはく離がないことを確かめて使用する.
スラブの下端筋に溶接金網を用いる場合の梁への定着の一例を解説図6.12に示す.
解説図6.12 溶接金網をスラブ下端筋に配筋した場合の定着
b.溶接金網の重ね継手は次による.
i)応力を伝達する継手では,最外縁の横線間距離を横線間隔+50mmかつ150mm以上とする〔図6.3(a)〕.ただし溶接金網は,継手部に溶接点のはく離がないことを確かめて使用する.
ii)ひびわれ幅制御用など,構造耐力を要しない場合の継手では,最外縁の横線間距離を横線間隔かつ100mm以上とする〔図6.3(b)〕.
つまり
溶接金網の拾い出しを行なう時にやりがちな失敗例とは、
継手部分や定着部分を考慮せずに溶接金網の定尺寸法で
割り付けてしまって最終的に数量が不足することです。
構造の特記仕様書や溶接金網のピッチなどを考慮して、
端部の1枚目の寸法、2枚目からの重ね合わせを計算した寸法
で割付を行わないと思わぬ失敗をしてしまうからです。
ここで
私が1番伝えたかったことは、溶接金網の拾い出しに注意しよう。
ということではありません。
むしろ
一見「簡単そうに見えるもの」に対してナメてかかると
思わぬ「しっぺ返し」が待っているかも知れません。
だから何事も慎重にして欲しいということです。
だけど
失敗はどんなに気をつけていてもやってしまいます。
大切なのは「失敗をした時のリカバリー」です。
こちらの記事を合わせて読んで是非失敗に強くなって下さいね。
↓ ↓ ↓
すごくわかります。
初めて拾ったとき、重ねを忘れて10枚ぐらい足りなくなりました。
鉄筋の番頭さんが気を利かせて予備を発注してくれてて助かりましたが・・・。
T.kumagaiさん。
コメントありがとうございます。
同様の体験を既にされているのですね。
鉄筋屋さんファインプレーで良かったです。
今回のように「少し考えると当たり前」の事が、現場では忙しいと度々起こってしまいます。簡単な事ほど「落とし穴」に注意ですね。