コンクリートの湿潤養生と言えば打設後のスラブに対して水をまく
「散水養生」を私はまず思い浮かべますがあなたはどうでしょう?
確かに
コンクリート打設後に散水をする散水養生はコンクリートを湿潤状態に保つ
非常に効果的な方法の1つです。
打設後まもない材齢のコンクリートを湿潤状態に保つことで、
コンクリートの硬化に伴う初期収縮を抑えることができて
有害なクラックを防ぐ事が出来ますからね。
それだけ
コンクリート打設直後の「水分」は良い品質を得るために
非常に大切な要素なのです。
しかし
湿潤養生というのは散水養生だけではありません。
あなたも普段から目にしている型枠も湿潤養生に
一役買っているのです。
実は
型枠に覆われている部分のコンクリートについては湿潤養生と見なされます。
この型枠というのは、コンパネなどの「せき板」の事を指しており
鋼管などの緊結材は無くても構いません。
「コンクリートの表面が何かしらで覆われている」事が重要なのです。
そして
初期の湿潤養生が完了したと見なされる期間については、
コンクリートの圧縮強度が10N/mm2(計画供用期間が標準)
となるまでなので、一般的な脱型用の5N/mm2より大きいです。
すると
「5N/mm2あれば良い」という認識で現場を管理すると、
強度管理という面では品質基準を満たしているが、
養生という面では品質基準を満たしていないという
事態が知らず知らずの内に起きてしまっているのです。
だけど
「10N/mm2になるまで現場の解体は待てないよ~!」
とあなたは感じる事もあるでしょう。
確かに現場において「背に腹はかえられぬ」状況もあるので、
実際にはあなたが状況に応じて判断すべきなのですが、
季節によって「試験のタイミングを少し送らせる」
「1度濡れたコンクリートは乾きにくいので湿潤状態になっている」
などの可能性を1度考えてみるのも手ではないでしょうか?
最後に
「建築工事監理指針(令和元年版上巻) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
の該当部分を確認して下さい。
P.421
6.7.2 湿潤養生
打込み後のコンクリートが、透水性の小さいせき板で保護されている場合は、湿潤養生と考えてもよい。しかし、コンクリートの打込み上部等でコンクリート面が露出している場合、あるいは透水性の大きいせき板を用いる場合には、日光の直射、風等により乾燥しやすいので、初期の湿潤養生が不可欠となる。湿潤養生には、養生マット又は水密シート等で覆う方法、連続又は断続的に散水又は噴霧を行う方法、膜養生剤や浸透性養生剤の塗布による方法等がある。
夏期や風の強い日に施工した床スラブ・ひさし等薄い部材では、コンクリートが急速に乾燥するため、特に初期の湿潤養生が大切である。また、混合セメントを使用するときには特に早期における乾燥を防ぐようにする。
また、 「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」 8.2 [湿潤養生] においては、湿潤養生の期間について、コンクリート部分の厚さが18cm 以上の部材において、早強・普通・中庸熱ポルトランドセメントを用いる場合、計画供用期間の級が短期及び標準の場合は、コンクリートの圧縮強度が10N/mm2 以上、長期及び超長期の場合は 15N/mm2以上に逃したことが確認されれば、以降の湿潤養生を打ち切ることができるとしている。
「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)(平成31年版) [ 国土交通省大臣官房官庁営繕部 ]」
表 6.7.1 湿潤養生の期間
セメントの種類 期間 普通ポルトランドセメント
高炉セメントA種
シリカセメントA種
フライアッシュセメントA種5日以上 早強ポルトランドセメント 3日以上 中庸熱ポルトランドセメント
低熱ポルトランドセメント
高炉セメントB種
フライアッシュセメントB種7日以上
つまり
コンクリートの湿潤養生としてはスラブ上に散水する
「散水養生」だけではなくて、型枠に覆われている面も
養生の対象になります。
だから
普通ポルトランドの場合は5日以上の養生か?
圧縮強度が10(N/mm2) 以上になるか?
が型枠の中のせき板の取外し条件となります。
すると
通常の型枠の取外し強度の5(N/mm2) 以上であれば
何も問題ないという訳ではないので注意が必要ですよ。
出来れば、最初の壁型枠解体用の試験時に10N以上
の結果が出れば兼用できるので検討してみて下さいね。
また
コンクリートは新築工事の場合は供試体を採取したもので
圧縮強度試験を行うのですが、実は「原理原則」は
こちらの考え方なので、知識として確認しておいて下さいね。
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